熱海の空は見飽きない。祝日のこの日、朝から雨模様で、山の端はすっかり黒いもやがかかり、厚い雨雲におおわれている。でも、多賀の山々をくだる稜線は次第に雲が切れて、海をながめると、その上に青空ものぞいている。海の上空は三層の雲。いちばん奥に青空があり、うっすらと流れる白雲。少しさがってやや厚い、灰色の雲が東に深くひろがり、その下に濃い灰色の雲が重なりながら広がり、広がりながら裂け目をのぞかせている。雨も激しくふるかと思えば、こぶりになって日の光が窓越しに射し込む。
昨日だったらよかったのにと思ったけれど、今日は関礼子さんご夫婦が熱海のホテルで宿泊ということで、我が家を訪ねてくれるという。昼少し前に駅まで車でお迎え。この時は雨もかなりふっていたが、お越しいただいてから徐々に晴れ上がっていく。
関さんとはもう20年近いおつきあいになる。学会で知り合い、十川さんや小森さんと一緒に中勘助「銀の匙」注釈の共同作業をやったときに親しくさせてもらった。関さんのサバティカルのときには、小森さんとふたりで関さんの亜細亜大学での代講をつとめることもあったし、学会編集委員長を関さんがつとめたときには、ふたたび亜大に編集委員として通ったこともあった。気さくで、信頼できる年上の友人でもある。パートナーのヒデオさんふくめ、夫婦でイロイロお世話になってきた方たちだ。このブログを見て訪ねてきていただいたということで、それもありがたかった。
残念ながら祝日だし、悪天候で鮮魚の仕入れが十分できなかったけれど、先日、真鶴漁港で入手したイサキの干物や福岡からの稚加榮の明太子、函南の有機野菜で簡単な昼食をおもてなしする。家のなかをご案内したあと、さんざん気楽な雑談に興じてコーヒーをいれる。最近、生豆を焙煎していれるコーヒーメーカーを買ったので深煎りで試してみる。けっこう美味しい。熱海港の眺めを楽しんでいただいたあと、車でホテルまでご案内。そのころにはすっかり天気もよくなっていました。
そのむかし島崎藤村が「千曲川のスケッチ」で雲の観察を散文にしていましたが、たしかに空ひとつとっても、無数の動きがあって見飽きることはない。さて、ホテルでも熱海を堪能していただけたろうか。
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