もう1年前の映画になるけれど、見損ねていたロバート・アルトマンの遺作「今宵、フィッツジェラルド劇場で」をDVDで見ました。中西部のミネソタ州の地方都市にあるフィッツジェラルド劇場を舞台に、そこで生ライブをラジオ放送していた番組が放送局ごと大企業に買い取られ、今夜が最後というその日。いかにもアルトマンらしい群衆劇が展開していく。楽屋でひとりの老芸人(サム・ペキンパー映画の常連だったL・Q・ジョーンズ)が急死するというアクシデントが起きるのだけれど、ミステリアスな登場人物がこういう、「老人の死は悲劇ではない」。ひとが死んで悲しみにくれながらも、番組はつづき、ひとびとは泣き、そして笑う。重いのに軽やかさがこの映画の持ち味だ。これを見てしまうと、三谷幸喜の「The有頂天ホテル」が子供っぽい映画に思えるのもしかたないか。司会・構成役、歌手もやるギャリソン・キーラー(実際のラジオのメインパーソナリティで脚本も書いている)が楽しい歌のかけあいを見せるし、メリル・ストリープとリリー・トムリンの姉妹歌手、ウディ・ハレルソン、ジョン・C・ライリーのカウボーイスタイルの歌手コンビがみごと。こういう軽やかなステップの映画を最後にとってアルトマンは死んだんだなと妙に納得してしまう。映画撮影中でも何かあれば代わりをつとめる監督もいたそうだから覚悟の映画でもあったのでしょう。未見の方にはおすすめします。