6月1日から熱海の梅園の初川清流でほたる5000匹が飛ぶという。「ほたる観賞の夕べ」と題して観光に力を入れている。そう聞いてはいたものの、実際には行ったことがありませんでした。この数日は雨模様でしたし、雨の日はほたるは飛ばないと言います。今日はめずらしくいい天気で、久しぶりに庭仕事に精を出し、風呂も浴びたところで、梅園に出かけてみました。タクシーや観光バス、ホテルの送迎バスがひっきりなしに出入りしていましたが、園内は足下のわずかな照明だけでまっくら。またとない月明かりでもあったので、その月影に照らされて、梅園内の小川に沿って歩いていってみると、いるいる、たしかに。かすかに青白い光を放って、ゆっくりふわふわと舞い、また光を消す。川の水音とほたるの微光。見物客のざわめきや懐中電灯などが集中をさまたげるのですが、光の明滅に声をあげる老若男女のなかに入っていると、それもあまり気にならなくなります。ほたる狩りなんて、記憶の底をさらってもほとんど思い出せないくらい、稀有なことですが、マキノ雅弘の映画「次郎長三国志 東海一の暴れん坊」のなかにそんなシーンがあったとか、古典文学や谷崎、宮本輝にいたるまでの二次的な記憶が浮かんできて、なんだか初めてではないように思われる。そんな不思議な体験でした。
あまりに月明かりが美しかったので、そのまま海岸沿いに出て、ヨットハーバーを散歩。そのときヨットと向こう側に見えるホテル、熱海城、浮かび上がる月を撮ったのがこれ。夜の熱海は、ホテル群の廃墟やストップした建設工事などもすっかり隠れて、べつな街のようでもあります。夜目遠目笠の内とは、このことですね。