ほんとうなら日本近代文学会の例会の日なのだけれど、今日は国立近代美術館フィルムセンターで開かれた文化政策史研究会の公開シンポジウムを聴きに出かける。今回のテーマは「映画と〝積極的統制〟」で、1943年の豊田四郎監督の朝鮮総督府後援の映画「若き姿」の上映もあった。豊田四郎は、1950年代の文芸映画で知られているが、そのスタートは戦前から。「小島の春」「大日向村」などの原作もので評判をとったが、その豊田の戦中最後の作品である。植民地朝鮮の中学校を舞台に、丸山定夫ふんする学校付きの陸軍少佐と創氏改名してすっかり日本人のようになっている朝鮮人出身の青年教師、その教え子でやはり日本名を名乗らされている朝鮮人の中学生を主人公にした映画である。朝鮮に徴兵令が施行される直前を描いていて、植民地の朝鮮人たちがどれだけ大日本帝国と大東亜共栄圏の思想を内面化しているかを競うという、青春映画の装いをしながら、その実かなりグロテスクな内容になっている国策映画。丸山定夫の少佐の奥さんに東山千栄子、陸軍大佐に月形龍之介、軍医に佐分利信が扮していました。午後のパネルは、同僚の三澤真美恵さんによる台湾植民地時代の文化映画、フィルムセンター研究員の岡田秀則さんのインドネシア占領時代の報道映画、日文研客員研究員の平野共余子さんによるルーマニア、アルバニアの独裁政権時代を事後的にふりかえった劇映画をめぐる報告と議論。むずかしいところもあるけれど、新しい問題点が浮かんできそうな気配を感じました。