会議のあと、あいまの時間が出来たので、映画「蒼き狼」を見てきました。澤井信一郎という監督は「野菊の墓」や「Wの悲劇」など、職人的にうまい映画作りをするひとで、昔から注目していた。今回はなんせ角川春樹がプロデューサーだし、どっちが監督なんだか分からないような厳しい状況なんだろうなと心配してたのですが、これがベタベタの日本的メロドラマにもかかわらず、合戦場面が見事という、予算A級、出来栄えB級という(B級というのはぼくにとって誉め言葉)作品になっていました。なにしろモンゴルを描いているのに全編日本語という不自然さは、ハリウッドもお得意だから何も言わないとして、反町隆史、菊川怜など、どこからどう見たって超B級というしかないタレントたちを使い、あまりに臭い型通りの演技をさせながら、ここまでまとめあげられたらすごいと言うしかない。モンゴルの大草原を舞台に、西部劇や古代歴史劇を見るかのような空間のとらえ方、躍動感あるひとと馬の動きを映像にとらえています。役者の演技やセリフ回し、物語の中味は二の次。ダイナミックな開放的空間のなかでくりひろげられる運動と、パオのなかの密室性がこの映画のいいところ。
そういえば「蒼き狼」というから井上靖の原作かと思ったら、「地果て海尽きるまで」という副題の方が森村誠一の原作なんだそうな。「蒼き狼」は井上の小説で有名になったけど、もとはチンギス・ハーンを指すから、かぶせちゃったんですね。
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