堀田善衞の展覧会に合わせて編集してきた「堀田善衞上海日記 滬上天下一九四五」が集英社から刊行されました。先月号の「すばる」で一部分が先行掲載されましたが、今回の単行本でその全貌が明らかにされます。堀田は1945年3月末に東京から上海に飛び、武田泰淳らと戦争最末期の日々をかの地で過ごします。8月11日に日本のポツダム宣言受諾、敗北が号外で知らされ、以後、1年半にわたり、敗北の民として監視のなかに置かれました。その間、日本軍にかわって上海を支配した中国国民政府の徴用を受け、対日文化工作委員会で活動するなど、敗戦前後の日本と中国の複雑な政治情勢のど真ん中に身を置いたのです。そのなかで27歳の青年が何を見て、何を考え、どのような生活を送ったかがつぶさに描かれています。ひとりの文学者の前史というだけでなく、20世紀の日本の歴史的証言としても貴重なものになっています。ぜひ手にとってお読み下さい。そして、現在、神奈川近代文学館で開催中の「堀田善衞展 スタジオジブリが描く乱世。」展にも足を運んで下さい。