人文研の共同研究グループにょる孫歌さんの講演会。竹内好から丸山真男へ、孫歌さんの関心が移ってきたとのことで、この日は「丸山真男における国際政治の視座」という演題。
話をうかがっていて孫歌さんの発想のなかで竹内好が生きていることを確認。たとえば、竹内は日本の近代化とその困難を考えるときに、たえず中国における近代化の遅れを対比的な軸に持ってきた。日本の近代化は中国よりもスムーズに進んだ。しかし、その結果としての帝国日本となり、敗戦となったしたら、何が間違っていたのか。中国はそれに比べて、はるかに悲惨な長い迂回を強いられたが、それによって得たものは何か。
孫歌さんが基本にもっているのは、中国の近代化はどうあるべきかである。21世紀にいたり、経済発展をつづける中国にとって、日本を鏡にすることで中国のオルタナティブを考える。現代の中国の知的状況において弱い学問は歴史学と政治学である。イデオロギーの政治しか見てこなかった中国にとって、政治をどのような視座でとらえるか。丸山真男の政治思想の内実はもはや古びているかもしれないが、その政治に対する認識論はいまの中国にとって必要である。それをやすりにすることによって、中国における政治的認識を鍛えあげなければならない。竹内好はまさに半世紀の時間をへて、いま中国における知識人のトップランナーに受け継がれている。もって瞑すべしと言うべきだろう。
議論は孫歌さんが提示した丸山真男の「他者を「他在」において理解する」認識方法とはどのようなものか。果たしてそれは「内在的」理解を超えるものたりうるのか。自他の関係が非対称的な関係だった場合にも可能なのか、をめぐって白熱。もちろん、結論は出なかったけれども、問題の所在が明らかになった点では、大きな意義のある会だったと思う。それにしても、孫歌さんといい、来週会うことのできる朴裕河さんといい、親しい友人たちに励まされることが多いのはうれしいことです。